知っておきたい、器のきほん

2022/09/09

近年、ライフスタイルや価値観が多様化し、日用品を選ぶ基準も幅広くなりました。

例えば、色や質感、フォルムといったデザイン性。あるいは、インテリアや家具など、インテリアとの相性。中には軽い、強いといった機能的に扱いやすいという点など。

皆さんは、どんな基準で器を選んでいますか?

器の特長を知れば、もっとかんたんに自分にあった器選びができるはず。今回は「知っておきたい、器のきほん」と題して、器にまつわる基礎知識をお伝えします。

まずはお手持ちの器がどのような素材か、記事を読みながらじっくりと観察してみてください。

素材と名称について

ひとことで『陶磁器』といっても、それは焼き物の総称の事。原料や焼き方によって、性質や強度、そしてお手入れのしかたも様々です。

器の種類

器として扱われる陶磁器は、主に「陶器・半磁器(ストーンウェア)・磁器」の3種類に分類されます。
表面の加飾や釉薬(うわぐすり)によっては、パッと見ただけでは見分けがつきにくいです。

詳しい名称と簡単な見分け方

陶器

原材料は粘土です。粒子が荒いため、吸水性があります。強度は磁器やストーンウェアには劣りますが、土の素朴な風合いが魅力的で、手しごとの温かさを感じられるといった特徴があります。

特長‥‥軽く叩くと鈍い音がします。生地に厚みがあることが多いです。

半磁器(ストーンウェア)

原材料は土と陶石の両方を混ぜ合わせたものです。そのため磁器と陶器のちょうど中間の吸水率です。陶器の柔らかくあたたかみのある印象はそのままに、磁器の強度を有しています。

特長‥‥陶器と同じように、軽く叩くと鈍い音がします。クリームがかった生地が多く、生地の色合いを活かした器はあまり見かけません。

磁器

磁器‥‥原材料は陶石です。高温で焼き上げる事から、吸水性がほとんどなく、強い強度を持っています。そのためシャープで薄作りなデザインが多く、また美しく白い素地を活かした、色絵付けなども多く作られてきました。

特長‥‥軽くはじくと「キンッ」と、金属音に似た高い音がします。透光性があるため、明るい色目の器は光を当てるとぼんやりと光が漏れます。

釉薬(ゆうやく)や器表面の状態について

釉薬(ゆうやく)とは、陶磁器の表面を覆うガラス質の膜のことです。釉薬をかけることにより、素地に水や汚れが染み込むことを防ぎ、丈夫で扱いやすくするといった役割があります。
自然の鉱物を原料とする釉薬は、焼成する事でガラス質に変化します。原料の配合によって多様な色合いを表現できますが、釉薬によっては非常にデリケートなものもあり、取り扱い方を知ることで長きにわたって愛用する事ができます。

【透明釉/飴釉】

うるっと瑞々しい表情が魅力の透明釉や飴釉。つやつやしている釉薬はやわらかい事が多く、傷がつきやすいです。傷は、生地色が白いと比較的目立たないこともありますが、生地色が濃い色合いのものはどうしても気になってしまいます。収納する際は、器のあいだに柔らかな布を挟んで重ねましょう。また、ナイフフォークではなくお箸を使用するのもおすすめです。

【鉄釉/窯変(ようへん)】

味わい深い表情が魅力的な鉄釉や窯変釉は、その名のとおり、鉄分の豊富な釉薬です。金属原料の化学変化で色合いを調整しているため、酸性の強い料理や食材を盛りつけて長時間おいておくと、変色したり、生地を傷めてしまう可能性があります。器に合わせて盛る料理を変えることで長く愛用いただけます。

【焼き締め/無釉】

生地の色を活かした、艶のないマットな質感がかっこいい焼き締め(無釉)。釉薬がかかっていない事から、目には見えなくても微細な穴が無数に開いています。そのため、揚げ物や油分の多い料理をそのまま盛りつけてしまうとシミになることがあります。盛りつける前に10分程度水にさらしたり、あるいは懐紙を活用するなどのひと手間で、油ジミを防ぐことができます。

マット釉

落ち着きのある雰囲気と手になじむ質感が魅力のマット釉。実は、釉薬に含まれる「結晶」が関係しています。マット釉は、釉薬に溶けきれない成分が表面まで結晶化し、光を乱反射することでマットな質感に見せています。表面を顕微鏡で見ると、透明釉に比べてぼこぼことしていて引っかかりやすく、キズになりやすいという特徴があります。そのため、キズ防止のためにもナイフフォークではなく、お箸を使う事をおすすめします。

貫入釉(かんにゅう) 

細かなヒビが美しい貫入釉。素地と釉薬の膨張・収縮率が異なる事で起こるヒビ割れを利用したデザインです。貫入釉は、そのまま使用すると、醤油やソースなど色の濃い液体が染みてしまうことがあります。ご使用前に水にさらすことで染みこみを予防します。また、風当たりのいい場所で乾燥させ食器棚にしまうことで、カビを防止し、長く愛用する事ができます。

今回は、うつわの素材や釉薬の基本知識をご紹介しました。

使っていくうちに味わいが出てくる、そんな変化を愉しむのも器集めの醍醐味です。
長く愛用する事で、“語りたくなるお気に入りの一枚”を少しずつ、生活に取り入れていきましょう。